ららぽーと富士見問題と富士見市議会

市からの情報提供がほとんどなく、一般市民の知らないところで検討が進められ、そして、「ららぽーと富士見」計画が中止となったときも、前後に市からの情報提供もなく、あたかも元から無かった話、の如しになっているといっても、一般市民の感想としては、過言ではないと思います。

市役所からの直接的な情報提供はほとんどありませんでしたが、富士見市議会において、議員各位の一般質問により、また市民からの陳情、請願をきっかけとして、富士見市当局からの情報が一部ながら明らかにされていました。

ここでは、議員が市に市政に関する質問を行う一般質問とそれに対する市当局や市長の答弁からわかってきたこと、市民から出された陳情、請願の採否に、議員(会派)がどのように対応したか、ということについて、まとめていきたいと思います。

参考として、「富士見市議会会派構成の動き」もご覧ください。

動きの概要

インターネットで会議録が検索できる、平成16年の分から調べてみましたが、取り上げる議員さんも多くいらっしゃいました。
調べてみますと、平成18年第1回議会までは、期待や賛意を表わす与党系の議員が取り上げることが多く、野党系では、1名の方が取り上げているだけです。

しかしながら、平成18年第2回議会から、ガラッと変わります。この議会では、一般質問において、共産党議員4名全員がシティゾーン開発(ららぽーと富士見)について、とりあげました。そして、これ以降、共産党が、市役所前の開発に対して、疑問を持つ立場、そして反対の立場であることが、しだいに明確になっていきます。

共産党は、所属国会議員がこの件を話題にするなどして、国レベルでの問題提起をしていきますが、これにより、農政局による農地転用許可の審査が慎重になり、時間を要することになってしまったという見方も出ています。

この平成18年第2回議会では、「山室・勝瀬地域(シティゾーン)開発計画の情報公開を求める件」という陳情が出され、共産党が賛成したことが会議録からわかりましたが、不採択になりました。

なお、この年の3月に、三井不動産が開発主体と決まりました。

この平成18年第2回会議以降、与党系議員による賛成の立場、共産党議員による反対の立場、というそれぞれの立場からの質問が、計画が中止となる直前の、平成20年第1回議会まで続きます。

平成18年第2回会議以降、陳情、請願については、2件提出されました。

まず、平成19年第3回議会に、
「市役所前巨大ショッピングセンターの開発は、市民への情報公開と市民合意なしに、許可しないよう求める陳情」
という開発に反対する立場の市民からの陳情が出されました。
これについては、共産党、富士見市民ネットワーク、草の根の3会派が賛成しましたが、不採択になりました。

平成19年第4回議会には、
「富士見市山室・勝瀬地区商業施設実現を求める請願」という開発に賛成する立場の市民からの請願が提出されました。
本会議の議決では、共産党は退席、富士見市民ネットワークが反対しましたが、賛成多数で採択となりました。

請願・陳情のまとめ
提出議会 陳情/請願の題名 結果 備考
18年第2回 山室・勝瀬地域(シティゾーン)開発計画の情報公開を求める件 不採択 共産党は採択に賛成
19年第3回 市役所前巨大ショッピングセンターの開発は、市民への情報公開と市民合意なしに、許可しないよう求める陳情 不採択 採択に賛成:共産党、草の根、富士見市民ネットワーク
採択に反対:21・未来クラブ、ニューコア、公明党、民主党・清新会
19年第4回 富士見市山室・勝瀬地区商業施設実現を求める請願 採択 採択に賛成:21・未来クラブ、ニューコア、公明党、民主党・清新会、草の根
採択に反対:富士見市民ネットワーク
採決時退席:共産党
全体を通じ、議員からの一般質問に対し、副市長以下の市役所事務方、特に担当の部長は、熱心かつ詳細な答弁を行うことが多く、その取り組み姿勢は、積極的だったように見えます。

必ずしも国や県(の一部部局)が積極的ではない中で、よく研究し、なんとか農地転用を実現するように努力し、実現寸前までこぎつけていたことがわかります。
その背景は別として、ららぽーと富士見の頓挫の直接的な原因は、行政の怠慢ではなく、地権者の一部が賛同しなかったことであることが、裏付けられるものと思います。

しかし、市長自身はどうだったでしょうか。

最近の会議録からは、なんとしても実現する、というような気迫が感じられません。

立場もあるのかもしれませんが、議員からのメッセージにも、淡々と応えるのみです。
その案件に対する気持ちというものは、どんなに抑えてもにじみ出るものと思います。
個人的には、富士見市の将来を左右する重要なプロジェクトにもかかわらず、積極的な取り組み姿勢、ということが伝わってこない答弁は、なんとも残念でなりません。

それが、端的に出ているのは、平成20年第1回の石川新一郎議員の一般質問に対する答弁だと思います。
<引用元、富士見市議会会議録>

石川議員
「大型商業施設誘致を積極的に推進と。今10万市民が大変に期待しているのが、富士見市役所のすぐそばにできるであろう大型ショッピングモール、大型商業施設であります。至るところ歩いていますと、間もなくできるのでしょうと、そのような声がたくさん聞こえるわけであります。富士見市の将来、そしてまた市民の方も今経済的な負担が大きくなっている、その中で市民の期待と希望を一身に集めているのが、この市役所の前にできます大型ショッピングモールであろうと思っております。そういう意味で、現在の進捗状況と富士見市の決意について、市長からお伺いをしておきたいなと、こう思っております。」(該当部分そのまま抜粋)

市長
「山室・勝瀬開発に対する市の決意ということでございますので、私から答弁を申し上げます。この開発につきましては、昨日も答弁申し上げましたように、私としても今日まで市のまちづくりということでできる限り努力はしてまいりましたが、現時点では大変難しい状況とお聞きをしておりますので、今後は山室・勝瀬地区開発協議会や地主会及び関係機関とも十分協議し、方向性を定めていきたいと考えておりますので、ご理解をお願いいたします。」(該当部分そのまま抜粋)

決意は伝わってこないように思えます。そのためかどうかはわかりませんが、石川議員は、再度質問します。

石川議員
「そこで最初に、山室・勝瀬の開発の問題でありますけれども、最近実は耳にいたしました。山室・勝瀬協議会と三井不動産との間で取り交わした協定書が、いよいよ3月15日、あさってで契約が切れるようであります。これは本当なのでしょうか。この契約が切れますと、実質的に三井不動産が富士見市を撤退ということになり、大型商業施設が夢と消えてしまうのでありましょうか。この三井不動産に事業者が決定以来、2年2カ月経過いたしました。富士見市も協議会も地主会も、そしてまたJAも心血を注いで、富士見市の将来のまちづくりのため、そして10万市民の希望のために懸命に、精力的に頑張ってこられたと思うのです。ありとあらゆることを手がけ、それこそ「止暇断眠」で命がけでまとめようと最大限の努力を払ってこられたと思うわけであります。まとまれば、10万市民に新たな希望と、大いなる元気を与えることができるのです。協議会だって地主会だって富士見市だって、歓喜にわくことは間違いありません。逆に三井不動産が全面撤退となれば、今鶴瀬東2丁目にある事務所も、シャッター全部閉めっ放しだとお聞きしました。この三井不動産が全面撤退となれば、極端な例かもしれませんけれども、日本最大の開発業者です。この開発業者から、富士見市が不信任を受けたのと同じであると思うわけであります。今後二度と富士見市は、業界から信用されることはないのではないかと、そこまで私は、勝手でありますけれども、心配をしてしまうわけであります。この開発に反対をされている方もおります。その反対している人の真意を本当に理解され、すべてを包含して粘り強く話し合いをまとめていただきたい。これが10万市民の願いであり、私は全10万市民が起立して、何とかしてくれよと頭を下げているように思えてならないわけです。
  市長、ぜひ何とかなりませんか、ご答弁お願いします。」(該当部分そのまま抜粋)

石川議員の再びの熱いメッセージに対する答弁は、

市長
「お答えをいたします。
  先ほどもお答えしたとおり、これはまちづくりですから、引き続いてやっていかなければいけないということでございます。」(全文そのまま引用)
と、いうことでした。

参考資料:富士見市議会会議録

・作成履歴 2008/7/8作成 

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